らしい、というのは、この事は親からではなく別の親族ルートから聞いたから。
お金のこと。
わたしがまだ実家にいたときも、うちに立ち塞がる壁は、十中八九これだった。
わたしは幼いながら、お金に苦労している親の姿をみて、お金がないのは悪だ。と訳のわからない思いを抱いたものだ。
今回の件は、わたしには直接は関係ないのだけれど、知ってしまったからには放っておけず電話した。
電話をとった父は何となくよそよそしい口調で、お母さんか?と聞いてきたので、うん。と答えた。
電話口に出た母の声も、今日はよそよそしく感じる。
あのさ、ちょっと聞いたんやけど…
え、何?何のこと?
……あ、あれか。
うん。生活、大丈夫なん?
…大丈夫やで。
そっか。聞いてどうかな、思てん。
みんなお通夜みたいな顔して、下向いてたらどうしよ。思って電話してみてんか。
んふふ、それはないわぁ。
よかった。それだけ聞いとかな。思たし。ほんまそれだけ。
うん。大丈夫やで。
遅に電話してしもて、ごめんな。元気そうやし安心した。ほな、またね。
うん、また。
きっと昔のわたしだったら、開口一番に父と母を責めてたと思う。
この歳になってやっとかもしれないけど、こういうときどうすればいいのか分かった気がする。